国際離婚について弁護士が解説
① 準拠する法律が日本法である場合
◆日本法に基づく離婚手続きについて
日本法に基づいて協議離婚を行うことが可能です。しかし、協議離婚を認めている国は限られているため、外国人配偶者の母国の法律において協議離婚が許可されているかどうかを確認することが重要です。このため、裁判所を通じた離婚手続き(調停離婚、審判離婚、裁判離婚)を選択することが推奨されます。これにより、法的なトラブルを避けることができ、より安全な離婚手続きが実現できます。
② 準拠する法律が外国法である場合
◆外国法に基づく離婚の取り扱いについて
1. 準拠法が離婚を禁じている場合
もし適用される法律が離婚を許可していない場合、日本国内で離婚訴訟を起こしても、基本的には離婚は認められません。ただし、日本の公序良俗に著しく反する結果となる場合には、外国法の適用が排除され、日本の法律が優先されることがあります。なお、日本の法律で離婚が認められたとしても、配偶者の国では離婚が成立しない可能性があることに留意が必要です。
2. 準拠法が協議離婚を認めている場合
適用される法律や離婚を行う地域の法律に従って、協議離婚の手続きを進めることが求められます。日本で協議離婚を行う際には、以下の書類が必要です:
①国籍証明書
②外国人登録証明書
③婚姻証明書
④当該国の法律に基づく証明書(協議離婚が日本の手続きに従って実施可能であることを示す書類)
3. 準拠法が裁判離婚のみを認めている場合
日本の実務では、調停や審判による離婚も裁判離婚の一部として扱われています。しかし、外国において必ずしも同様に認められるわけではありません。そのため、該当国の外交機関などに確認を行い、詳細な調査を行うことが重要です。
1 国際離婚の方法
◆国際離婚の方法について
国際離婚を行う際には、以下の4つの方法が考えられます。
①協議による離婚
②調停を通じた離婚
③審判による離婚
④裁判を経ての離婚
相手方が離婚に同意している場合、最もスムーズに進められるのは「協議による離婚」です。しかし、協議離婚を認めていない国も存在するため、その場合には効力が生じない可能性があるため、注意が必要です。もし協議離婚が成立しない場合は、調停または裁判の手続きを選択することになります。
2 国際離婚の裁判管轄(日本で離婚裁判をすることができるか)
◆国際離婚に関する裁判管轄の理解
1. 国際離婚における裁判管轄
国際的な離婚事案における裁判管轄については、日本の法律において明確な規定がなかったため、従来は解釈に依存していました。しかし、平成30年4月18日に成立し、平成31年4月1日に施行された人事訴訟法の一部改正により、国際裁判管轄が明確化されました。
この改正により、以下の条件に該当する場合、日本の裁判所が国際裁判管轄を有するとされています。
①被告の住所が日本国内に存在する場合(住所が不明または不在の場合は居所が適用されます)
②夫婦が両方とも日本国籍を有する場合
③原告の居住地が日本に存在し、さらに夫婦の最後の共同の居住地も日本である場合
④特別な事情が存在する場合
原告の住所が日本にあり、被告が行方不明であるか、被告の国での同一の身分関係に関する判決が日本で効力を持たない場合など。
2. 行方不明の証明方法
被告の行方不明を証明するためには、次のような資料を収集し、裁判所に提出することが考えられます。
①原告自身の陳述書
②被告の出入国履歴
③被告の本国から返送された未配達の手紙
3. 特別な事情の認定
相手方が一方的に本国に帰国し置き去りにされたケースや、配偶者から外国でのDVを受け日本に逃げ帰ったケースなどで人事訴訟法3条の2の7号が定める「日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を図り、又は適正かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情があると認められるとき」として、日本の裁判管轄が認められる可能性があります。
《 調停における国際裁判管轄 》
離婚訴訟における国際裁判管轄については前述の通りですが、調停に関しても重要なポイントがあります。人事訴訟法と並行して改正された家事事件手続法により、家事調停事件についても、日本の裁判所が国際裁判管轄を持つ場合に加え、これまで認められていた合意管轄が明文化されました。
このように、国際離婚に関する裁判管轄の制度は、より明確になっており、実務においても適切な対応が求められています。法律的な問題に直面した場合には、専門家の助言を受けることが重要です。
3 国際離婚の準拠法(どこの国の法律が適用されるか)
◆国際離婚における準拠法の重要性
国際離婚は、異なる国の法律が絡む複雑な問題であり、当事者にとって多くの困難をもたらします。その中でも特に重要なのが「準拠法」の選定です。
準拠法とは、離婚に関する法的手続きを行う際に適用される法律のことを指します。国際離婚では、当事者の居住地や国籍、婚姻の成立地など、さまざまな要因が準拠法の選定に影響を与えます。
まず、準拠法が重要な理由の一つは、離婚手続きの進行に関わる法的要件が異なるためです。例えば、ある国では離婚を成立させるために特定の条件を満たさなければならない場合があります。これに対し、別の国では手続きが比較的簡素化されていることもあります。したがって、準拠法を明確にすることは、スムーズな手続きを実現するために欠かせません。
さらに、準拠法は財産分与や子どもの養育権に関する決定にも大きな影響を与えます。国によっては、財産の分け方や養育権の取り決めに関する法律が大きく異なるため、どの法律を適用するかによって、結果が大きく変わることがあります。例えば、ある国では共同財産制度が採用されている一方、別の国では各自の資産を個別に扱う制度があるため、準拠法の選定は非常に重要です。
また、国際離婚においては、当事者の権利を保護するためにも準拠法の確認が必要です。特に、国際的な視点から見た場合、法的な保護が不十分な国も存在します。そのため、どの国の法律を適用するかによって、当事者が受ける法的保護の程度が変わることがあります。このような観点からも、準拠法の選定は慎重に行う必要があります。
4 外国での離婚判決の日本における効力
◆外国での離婚判決の日本における効力
海外で離婚手続きを行った方々は、日本の法律においてその離婚が認められるのか、財産分与や子どもの親権についての疑問を抱えていることでしょう。外国の離婚判決が日本で有効とされるためには、民事訴訟法第118条に基づく以下の4つの要件を全て満たす必要があります。
① 裁判権の存在: 審理を行った外国の裁判所が、法令・条約によりその事件の裁判権を持っていることが求められます。
②適切な訴訟手続き: 訴訟が開始された際に、被告に対して適切に通知が行われていることが必要です(たとえば、裁判所から正式な書類が届くことなど)。
③公序良俗の遵守: 判決内容や手続きが、日本の社会の秩序や道徳に反しないことが条件となります。
④相互主義の原則: 日本とその外国との間で、互いの判決を認め合う条約が存在することが求められます。
効力が認められない場合の例
上記のいずれかの要件が満たされない場合、日本の裁判所は外国の離婚判決を無効とする可能性があります。具体的には以下のケースがあります。
①日本に居住する配偶者への通知
外国での訴訟が開始されたことが、日本に住む配偶者に正式な文書で通知されていることが重要です。
②私人による送達
裁判所によらず、私人から郵便で送付された場合、適切な通知とは認められない可能性があります。
外国での離婚は、日本国内の離婚手続きと異なり、複雑な問題が生じることがあります。離婚後の財産分与や子どもの親権に関する問題が発生した際は、弁護士に相談することを強くお勧めします。
5 日本での離婚判決の外国における効力
◆日本における離婚判決の国際的効力
日本国内で離婚の成立が確認されても、その効力が他国で認められるかどうかは国によって異なります。特に、特定の国では外国での離婚手続きを受け入れないケースも見受けられます。そのため、日本人と外国人が日本で離婚した際、外国人の国籍国において、改めて離婚手続きを行う必要があるかもしれません。
各国の離婚制度は多様であり、外国における離婚を有効とするには、必要な手続きについて専門家の意見を仰ぐことが重要です。特に、裁判所を通さずに当事者の合意だけで離婚を認める国は比較的少数です。このため、日本で協議離婚を行った場合でも、協議離婚を認めていない国ではその効力を認められない可能性が高いです。
もし協議離婚が可能な場合でも、調停離婚や審判離婚といった他の選択肢を考慮することも大切です。国際的な離婚問題に直面している方は、事前に詳細な情報を確認し、適切な手続きを進めることをお勧めいたします。
6 離婚と在留資格
◆離婚と在留資格について
日本人の配偶者や永住者の配偶者として日本に滞在していた外国人は、離婚によりその在留資格の根拠を失うことになります。この場合、在留資格の変更手続きが求められます。
もし、結婚生活が約3年続いており、安定した収入がある場合は、離婚後にも「定住者」としての在留資格を取得できる可能性があります。また、日本人配偶者と離婚した後に、日本人の実子の親権を持ち、実子を育てている場合、たとえ収入がなくても(例えば、生活保護を受けている場合でも)「定住者」の在留資格を得ることが可能です。
離婚後の在留資格についての理解を深めることは非常に重要です。
国際離婚を弁護士に依頼するメリット
◆国際離婚における弁護士依頼の利点
1. 複雑な手続きの専門家によるサポート
国際離婚の際には、通常の離婚手続きに比べて、多くの複雑な課題が存在します。例えば、どのような方法で離婚を進めるか、裁判をどの国で行うか、またどの国の法律を適用するかなど、様々な選択肢があります。これらの問題は、特に国際的な要素が絡む場合、非常に難解であることが多いです。
一例として、離婚方法が一方の国では裁判離婚しか認められていない場合、日本においても調停や裁判を選ぶ必要が出てくる場合があります。また、裁判管轄については、一般的には相手方の住所地が基準となりますが、原告側の住所地が管轄とされることもあります。このように、相手が外国にいる場合でも、日本での裁判が可能かどうかを慎重に検討しなければなりません。
弁護士に依頼することで、これらの複雑な法律的問題を専門知識に基づいて適切に処理し、安心して手続きを進めることができます。
2. 弁護士の権限による調査の実施
国際離婚のケースでは、相手方が行方不明になることもあります。このような状況では、相手が日本にいるのか外国にいるのかも不明な場合があります。しかし、弁護士に依頼することで、弁護士会を通じて入国管理局に問い合わせを行い、相手方の出入国履歴やその他の情報を調査することができます。
このような調査を通じて相手方の住所が特定されれば、直接連絡を取って離婚手続きを進めることが可能です。もし相手方が依然として行方不明であれば、弁護士は公示送達を利用して離婚裁判を進めることもできます。このように、弁護士の専門的なサポートがあれば、困難な状況でも適切に対処できる可能性が高まります。